ウォータートライアル体験記

2002年7月の最終日曜日に琵琶湖の講習会へ参加したのが始まり。10月のテストに向けて9月一回、10月の3連休を利用して講習会に参加。10月12〜14日は本場スウェーデンから、会長のSten氏&トレーナーのMonikaさんが来日して、直々のご指導を頂いた。

会長はスウェーデンの畜犬団体の会長・ショージャッジ・WTジャッジを兼任している。会長(ショージャッジ)が、競技犬を見て、「5キロ減量しなさい」と言われたイヌがいた。外国のジャッジは凄いと思った。機能性を重んじている。

Monikaさんはトレーナー(訓練士)で、ゆくゆくウォータートライアルのジャッジをされるそうである。カーミングシグナルの大家でもある。イヌのルーツであるオオカミのカーミングシグナルから、イヌを捉えて訓練を入れていくやり方を使う。

私は犬を理解する上で最も重要な事だと感じた。我が家では2頭を飼っているせいか、イヌを観察しているとカーミングが2頭の会話に見えてくる。私も2頭を真似して時々使っている。
これはイヌを訓練する際に最も効果的な手段である。競技会でイヌを落ち着かせるときに(ハンドラーも含む)、このカーミングをハンドラー自身が使うことにより、より絆が深まり、ペアーとしての動きの安定に繋がるかも知れない。

カーミングシグナルには、ボディの表現・吠え方・目の表情など細かく分類されるのだ。
イヌに理解を伝えるために、身体の細部に渡って「ツボ」が有るのだ。
今回、学んだことで一番興味を惹いたのは、従来、私達がイヌを褒めるのに撫でていた場所は実は正反対の意味であることが判明した事である。
褒めに使っていた場所は実はボスである支配を表す「ツボ」なのだ。
飼い主が使う分にはそれ程気にはならないが、他人に触られることを容認していると犬自身が可哀相かも知れないな?と思ってしまった。この「ツボ」を触っても多くのイヌの場合は受け入れられるが、私の心の中ではイヌの気持ちを考えると複雑な想いを抱かざるを得ないのだ。

この事実はイヌに社会性(人間界)を教える為に、苦労されている飼い主さんには朗報かも知れない。カーミングシグナルを利用して、私はバッシングのツボ・褒めのツボを学んだ。この事は全ての訓練に役立つ有意義なモノになった。
まぁ、平たく言うと、犬のボディランゲージ(犬の仕草)のこと。
愛犬を観察すると自ずと見えてくる。

訓練をする際に日本には色んなやり方がある。
言葉や動作を伝えるために、褒美に食べ物を使う・リードワークを使う・チョークを使う等である。
どれも使い方さえ間違わなければ正論であると思っているが、使い方を間違うとトンでもないことになる。
一番大事なことは、その方法の正確な教えを入手することなのである。

良い指導者・良い学習者こそが良い犬を作るのだ。
私達飼い主は良い指導者を見分ける目を持たねばならない。
そして、愛犬に適切な教えを出来なければならない。

今回、一番難しかったのが、我が家の愛犬は泳ぐの大好きで仕方がない性格、
その興奮を抑えて、作業として教えなければならないことだった。
水際での服従作業も隙を見れば泳ごうとするWindy。
この場所で完璧な服従をするには遙かに高いハードルである。

社会性に於いてはWindyの場合、興奮している状態でも、飼い主に注目しているせいか、全然問題はないのだが、水際での服従作業はエキスパートクラスの競技内容を教え込むより遙かに難しいと思ってしまった。
はたから見れば意欲バリバリで水に突進するように思えるが、指導主にとってはコントロールが難しい。
私のスピードよりイヌの泳ぐスピードの方が断然速いのだ。

陸上だったら、指導主にスピードを合わさせるのは当然なのだが、水上だと、そんな事したらイヌが溺れるかも知れないと、思ってしまった。
犬に服従心(絆)が有れば、そんな心配は要らない事なんだろうか?
またも、私の指導力の無さを反省か?
そんな心配をしながら、最終日(3日目)S&Rテストがやって来た。

琵琶湖は例年に比べて水位が1メートルも低くて、泳がせられる場所までイヌを向かうのに100メートル進んでいく、スタート前の時点でもイヌは泳がなければならない、そして白波が立つ中で岸と並行に50メートル泳ぐのだ。
少しでもラインがずれるとたちまち中州(浅瀬)にイヌの足がついて失格になってしまうのだ。
イヌも人も波に打ち勝ちながら体力を消耗し、何とかクリア!
クリアした後も、岸まで100メートルを戻るのだ。
ホントに疲れたよ!一種目ずつ交代制かと思いきや、続けて3種目のテストだった。

2種目目はイヌを岸で待機させ、指導主は沖へ向かう、イヌが泳ぐ深さまで行って(ジャッジの指示)、
指導主はイヌを呼び寄せる。
指導主の右側を回して犬が岸を向いたと同時に、イヌの身体を掴んでイヌに岸まで引っ張って貰う。
ジャッジの指示が出るまで、ずっと犬に引っ張らせる。
途中の浅瀬でも、指導主はイヌを手助けしてはならない。ココでも、結構体力を消耗した。

最後に、物品回収。
イヌを待たせて、ジャッジの指示で物品(ダンベル)を沖へ向かって10メートル投げる。
ジャッジの指示の後、イヌにコマンドをかけてから、イヌがスタート。
物品を岸まで放さずに持って帰ってきて終了。
指導主ヘトヘト状態の中、何とかテストは合格した。
今回も、やはり指導主の体力勝負だったような気がする。
何事も、体力だなぁ!!もっともっと、自分を鍛えねば・・・つづく