犬カルト商法
■刑事の取り調べ室でカツ丼を前に刑事の執拗な尋問が続く。
これは少し古いドラマの定番ともいえるシーンで、本当にこんなことが行われているかどうかはさておき、カツ丼を前におあずけを繰り返し、刑事の都合のいい答えを出したときにだけカツ丼が食える。
これを繰り返すと確実に生物は壊れる。その結果、自分がしてもいない犯罪をやったと認めてしまったりする。
賢明な人ならこれが、洗脳の手法「クラッシュ&ビルド」であることの気がつくだろう。
マルチ商法の会社やカルトなどが会員対象に行っている人格改造セミナーのたぐいがこの方法をよく利用したりしている。まず、自分の価値観を白紙に戻すとかで、「クラッシュ」させ、そこに新しい価値観を「ビルド」していく。このクラッシュの課程でひどい場合は自殺などしてしまう人もいる。
■最近はどういうわけか、この手法を犬を訓練に応用する人まで現れてきていて、危険だなと思っていた。
どうやら、犬を散歩に連れ出すなとか、食事を前にした状態で何十分も待てをかけるとか、犬はケージに入れておけだとか、そういった犬の訓練法のマニュアルがネットで販売されているみたいなのだ。
その宣伝のホームページを見たが、まるでその手のマニュアルに沿った形で書かれていたので笑ってしまうぐらいであるが、これでコロッといってしまう人も多いらしい。
行動学やら、業界で封印された方法であるやら、そういった出し惜しみの技が満載で、最後には今ならこの金額でと書かれていて実際に犬のいわゆる問題行動で悩み、いろんな訓練士を渡り歩いた人は飛びついてしまうのだろう。
たしかに元々が洗脳的なプログラムであるから、犬は魂を抜かれたように従順になる。それを犬の精神が強くなったというところなども、クラッシュ&ビルド特有のものである。
仮に犬が壊れてしまっても、それは方法が間違っているなどいくらでもいいわけができるのである。
■本来、生物はよくできたもので、自然界を見渡してみても、子育てをする生物は皆、クラッシュ&ビルドといういわばカツ丼を見せておあづけをするような「飴と鞭」のようなことはしていない。
子供がなにかをして、それを親がしかる(鞭)。親は、しかられたことにしょげかえる子供を持てかわいそうに思い、よしよし(飴)をする。これが本来のしかり方、もともと遺伝子的にインプットされた生物の長年の叡智なのだ。
これは「飴と鞭」というよりは、「鞭と飴」だ。
ここにはなにか教育論が存在するかというとそうではない。いたって本能的に「鞭と飴」をつかっている。
よく動物におやつを与えて訓練したりする現場を見かけるが、これも動物が喜ぶこと=おやつということであるわけで、おやつでなくても普段遊んでいるオモチャや、頭をなぜるヨシヨシでも、抱きしめるでもいいわけである。
どのような生物にも対応できるブリッジ&ターゲットとかの訓練プログラムなどもこの本能的なものを理論化したものに過ぎない。これは生き物の基本的なコミュニケーションのもっとも核になることである。
■クラッシュ&ビルドのもっとも大きな敵は、この本能であり、その本能によって発現する「感情」である。
理屈ではよくわからないが、なにかオカシイとか、なにか怪しいと思われてはクラッシュ&ビルドが成立しなくなる。そこで感情をまずは否定してしまい、その後、理屈をすり込む。
ケージに長時間入れられたり、食事を前にして与えられないなどでしょげかえる犬をみてかわいそうだと思う本能のアラートを「甘やかしていけない」と理屈で否定してしまうのだ。
この理屈をもって先のおやつを使っての訓練を見ると、「餌で釣ってる」ようにしか見えなくなる。
「飴と鞭」という言葉は今や一般化した言葉であるようだが、世界のどこを見回してみてもこの「飴と鞭」で教育をおこなっているところなど、たたひとつを除いてはないのである。
その例外的なただひとつとは、先述した洗脳が必要とされる現場である。
■さて、犬となぜ暮らしているのか?なぜ、犬のしつけをするのか?
ケージの中に犬を入れたままであるとかいうのであれば、はじめからプログラムされたロボットなりを買ってくればなにも問題はない。自分の好きな時にスイッチをいれ、えさを与えることも、どこかに連れ出すことも必要ない。
犬とはつきあっても、長くて15年である。その15年間をいかように犬と過ごすかを考えたとき、犬と楽しく暮らしたい、犬とどこにでも行きたい。犬と同じ時間や空間を共有していたい。そう思うのが当たり前である。
そして、そのために犬に人の社会やらルールたらを教える、それがいわゆるしつけや教育であるのだ。決してなにかの試験に合格させるためでも、ましてや自分が犬と暮らすことを便利にするためのものではないはずだ。
■さぁぁて、この洗脳プログラムを応用した訓練法ビジネスにはまってしまった人は次の質問をためしてもらいたい。
次の項目に少しでも当てはまる事柄があるなら、あなたはこの犬カルトに餌食になっている可能性があります。
□その訓練法を実践しはじめてから、家族や有人とうまくいかなくなった。
□同じ訓練法を実践している人から叱咤激励のメールや電話があり、くじけそうになる自分を支えてくれる。
□他の訓練士や、犬のしつけをしている人が馬鹿、もしくは自分を騙そうとしているように見える。
□訓練方法は他言してはならないと言われている。
□クラッシュ&ビルドの方法論を使っている。
□このままだと犬が人に危害をくわえることになると脅された。
□この訓練法で成功した多くの事例を見せられた。
□自分が強くならないとダメだなどの精神論に行き着く言動を繰り返された。
□そのホームページに掲示板がなかった。
□どこかの掲示板で否定的なことを書かれると、その訓練をしている信者が大量に押しかけ掲示板を炎上させる。
□最近、犬がおびえたような表情をする。
カルト落としにはカルトしかありません。当方ではカルト落としのマニュアルを用意しております。今なら30分までの電話での相談を無料で行っておりますが、電話で相談できる数に限界がありますので予告な打ち切らせていただきます。
カルト落としの犬マニュアル。いまなら定価1500万円のところを、150万円で。
あなたはこの金額を高いと思いますか?高いと思う方はどうぞ、そのままカルト信者でいてください。
マニュアル希望の方はTEL88588181184(パパ、こんやはいっぱついいわよ)まで。
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犬やニンゲンの子どものしつけや教育はそれほど難しいものではなく、もともと我々はそれらを知っているのだ。
ただ、それらを難しくしているのは自分自信であるし、言葉による理屈であることを知るべきだ。
犬のことは犬に聞け。彼らの目を覗きこんだとき、そこに本当にやるべきことは書かれている。