悲しい現状

毎週、京都まで訓練に行っている、あまりの暑さに、自動販売機にジュースを買いに行った時のこと。
偶然その場にいた人から声をかけられた。
通りがかりのおじさん「犬はいいねぇ!私も昔、飼っていたのだけれど、借り住まいになったので、
大切な犬を手放さなければならなくなったんだよ!」
私「・・・・!」
通りがかりのおじさん「家族中でとても可愛がって育てていたんだ!」
「とても賢い子でねぇ!、、、。」
「そのこの分まで、可愛がってほしい!」
私「はい、頑張ります。・・・・・・!」
世間の風は、こんなところにまで、押し寄せてくるんだ。
犬を飼うときには一生大切な仲間として決心して飼うのだが、
どうにもならなくなることが、山ほど出てくるんだね!止む終えなくなるって、この事だと思った。
家庭の止む終えない事情が、愛すべき犬にまで押し寄せてくるんだね!
その昔、私が中学生だった頃、父の会社の都合でそれまで飼っていた犬が飼えなくなった。
私の場合は、祖父母の家に、その犬を預かって貰う事になった。
私の場合は、会おうと思えばジョンに会えたけれど、
仕方が無く手放した飼い主さん達は、ペットロスと同様の苦しみを一生持ち続けるのかも知れない。
里親さんのところへは、会いにいけないよね!後ろ髪引かれるから、
犬のためにもよくないからね。。。悲しい、別れだね!誰にも、責められることのない悲しみなんだ。
話をしていくうちに、子供の頃飼っていたジョンのことが心に蘇ってきた。

・・・愛犬ジョンの想い出・・・

「序章」

愛犬の名はジョン(柴×シェパ)♂。
ジョンは、私が中学の時に家から電車に乗って、30分離れた程の家に貰いに行った犬である。
犬を貰ってから電車に乗ろうとしたところ改札口で
「犬は小荷物扱いだから、箱に入れていないと電車に乗れないんだよ」と言われた。
幼かった私に考えつくことは皆無だった。1〜2時間程、駅前でウロウロしながら考えても、
何も浮かばなかった。当時の私は、考え込んだあげくに、
着ていたマントの中に、ジョンを抱き込み、内緒で電車に乗って家にやっと帰ることが出来た。
家族みんなでジョンが来たのを喜んだ。
その日、私がお風呂へ入っていると、ジョンがお風呂の炊き込み口から、
私を慕って、おふろ場に入ってきた。
当時のお風呂はお勝手口のところに、お風呂の炊き込み口があった。
ジョンは、お勝手口の場所を住処と指定されていた。
あんなにちっちゃかったんだと、今でも懐かしい。
ジョンの訓練は私の担当。「座れ・伏せ・来い・お手・ジャンプ」を教えた。
すくすく育ったジョンは、私が塾へ通っていた時、いつも母と一緒に駅で、待っていてくれた。
通学の時には、行きも帰りも同じ場所で出迎えてくれた。
時々、同じ制服姿の女子中学生に付いていって、途中で引き返したこともあったそうだ。
愛しいジョンは私の頼もしいボディガード犬だった。
ジョンは雷が嫌いで、そんな時は、両親に内緒で、私のベッドに入れてやった。
ジョンの得意技は、ねずみ取り、「あっ!ネズミ」と言うと、鼻をぴくぴくさせてネズミを捕獲。
首根っこの急所をガブリ!ネズミは天に召されます。
家族では、ねずみ取り名人のあだ名が付けられていた。
こんな事もあった。ジョンが私と間違えて家を出た途端に保健所に捕まったのだ。
その日は夜も眠れずに過ごした。保健所に問い合わせたところ、ジョンらしい犬がいるとわかって、
父に内緒(学校を休んで)で母とジョンを見付けに行った。
檻の中には、たくさんの捕獲された犬がいた。どの犬も、必死で連れて行って欲しいと懇願しているように思えた。
私が「あっ!ジョン!こっちへおいで」といっても、
ジョンは、「この犬達から先に出して上げて、僕はその後でいいよ!」と言っているみたいに、
傷心しきっていた。二度とこんな思いをジョンにさせたくないと心に刻んだ一日となった。
ジョンとの思いで作り進行中のさなか、私が高校へ上がった時、父が会社を変わった為、
その場所(社宅)を離れることになり、アパート住まいに変わらざるをえなくなった。

「愛しいジョンとの別居」

ジョンは祖父母の元へ預けられることになった。
私は夏・冬・春休みのたびに、ジョンの好きな食べ物を小遣いはたいて、お土産に持って行った。
休みの殆どを愛犬と過ごしていた。帰り際「また、来るからね!元気でね!」と毎回、
切ない思いを胸に、別れを告げた。
高校生時代から24才位まで祖父母のところで過ごした。
ジョンは年々、老いて、後ろ足が動かなくなってきた。
犬にとって自力で走れなくなることは死にも等しい程、辛いことだろうと、私はとても悲しかった。
排尿も困難なほど老衰してきていた。祖父母の元で安楽死を迫られることになった。
ジョンの最後の日、祖父母の家に泊まりに行っていたのだが、私は辛くてその場にいられなかった。
外出時にジョンと話を交わしたが、安楽死のことで胸が一杯で、ジョンを軽く撫でるのが精一杯だった。
外出中に、事は終わっていた。ジョンの遺体も帰ったとき既に家にはなかった。
今でも、とても後悔している。あの日ずっと一緒にいれば、ジョンの安楽死を止められたかも知れないと、、。
預かって貰っている以上、わがままは言えないと自分の意識を胸に閉じこめていた。
安楽死?これ以上、生きていたら苦しいけれど、それでも、自然死を選べるか?当時の私には知る術もなかった。
ジョンの死を知った後で、母に電話をした。
「今日、ジョンが逝っちゃったよ(私)」電話の先で母が涙ぐんでいるようだった。
「貴方が、最後にジョンに会ってくれたから、ジョンも幸せだったでしょう!(母)」と言っていた。
「星になったジョン!今でも、天国の野原を走りまわっれいるのかなぁ?」
「人間て、勝手だね!ゴメンねジョン!貴方はたくさんの素敵な思い出を私に与えてくれたのに!
私は何にも返せない!ホントにゴメンね!」

《無断転載を禁ず》